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<   2019年 06月 ( 4 )   > この月の画像一覧

蜘蛛の死

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 数ヶ月前からゴミ箱に下宿していた黒い蜘蛛が、ゴミ箱の本体とふたの間のせまい空間で動かない。どうしたのかと竹串でそっとつついても反応がない。隙間から出そうとすると脚が一本ぽろりとはずれた。すでに死んでいるのだ。せまい空間にうっかりはまって圧死したのか、食料が足りずに餓死したのか、それとも天寿を全うしたのか死因はわからない。最初は気味がわるいだけの蜘蛛だったが、毎日眺めるうちに意外な愛着がOpaにめばえて、いつもその動きが気になった。名もなき蜘蛛よ、あんたはずいぶんOpaを楽しませてくれた。ありがとう。彼女の住まいだったゴミ箱の乾いたゴミの上に屍を置く。やがて市の焼却場で荼毘に付されるだろう。煙となってお浄土にいったなら、必ずお釈迦様を訪ねなさい。蜘蛛の糸を一本ご所望になるはずである。

by mizzo301 | 2019-06-20 17:54 | エッセイ | Comments(4)

久しぶりの京都

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 久しぶりに会いましょうという、なつかしい楽団時代の先輩の呼びかけで、十年ぶりに京都へ向かった。泉南の海辺の田舎から京都は祇園四条まで二時間で到着、意外と早い。駅近の料理屋に京響OB様のかんばん、ここやここや。部屋には老婆老爺八人、これでも元バイオリン奏者の集いである。中には五十年ぶりの人もいる。席は昔話で大盛りあがり、懐かしさ満タン。やがて話題は老眼鏡、補聴器にまでおよぶ。内6人がすでに寡婦であり寡夫ではあるが、無常観などとは無縁のにぎやかな八十歳前後である。話は尽きないが、再会を約してコーヒーで解散。ひとり四条大橋をわたる。ぐずり始めた足腰をなだめながら、河原町を上がり丸善書店をめざす。梶井基次郎の「檸檬」にまつわる、書店のレモン置き場の情報を確認したかった。BARというおしゃれなビルの地下に店はあった。そしてレジ近くに平積みの文庫本「檸檬」が置かれ、下の棚の小さなバスケットにしなびたレモンが数個ころがっている。がっかり、わざわざ見に来るほどの光景ではない。だが見ないといつまでも気になって仕方がなかろう。やっぱり来てよかったのかなあ。

by mizzo301 | 2019-06-18 18:06 | エッセイ | Comments(2)

あしさいの季節

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 町内あちらこちらの庭や畑にあじさいが咲いている。わが家でも何十年来の古い株が、いくつも大輪の花をつけている。そんなあじさいたちが、なにかをあきらめたような顔で長雨に打たれている景色がいい。ところが今年は雨が少ない。ドンの散歩にはありがたいことではあるのだけれど・・。子供時代の思い出がある。母が庭のあじさいを切った花束を新聞紙にくるみ、少年Opaに学校へ持って行きなさいという。それまでのこわい男の担任の先生から、やさしい中年の女の先生にかわったばかりの5年生である。登校に余計なものを持つのもいやだったが、先生になんといって渡せばいいのかわからない。朝の教室にはまだ先生がみえない。今のうちに教室の前の先生の机に置いておこう。でもきっと先生はだれが持ってきたのかときくだろう。その時にはだまって手をあげようと決めた。ところが教室にみえた先生は、おはようございますのあいさつの後、だまって机上の新聞紙を開き、バケツに水をくんでそこへあじさいを活けられた。そしてその日のうちに花は花瓶に活けかえられて先生の机上にあった。そこに花のある間の何日か、だれが持ってきたのかときかれるのを、その時には手をあげようと、Opaは今か今かと待ったがついにその言葉を聞くことはなかった。こども心になにか釈然としないOpa5年生の日々であった。

by mizzo301 | 2019-06-15 17:16 | エッセイ | Comments(0)

蜘蛛その後

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 ゴミ箱のふた裏に住む黒い蜘蛛は、妊婦ではなかったらしい。お腹が日によってふくらんでいたり、スリムだったりする。なぜかはわからない。ある晩、ゴミ箱をあけたら蜘蛛が見あたらない。懐中電灯でふたの周辺やゴミの表面をさがしたがどこにも見あたらない。さては手狭なふたの裏に嫌気がさして、もっと快適な新居を求めて出て行ってしまったのかと思った。ところが翌朝、ゴミ箱を開くといつものところにうずくまっている。昼間いつ見てもその場所にいて、うす綿のような巣の下を数センチ移動する。その晩、気になってふたの裏を見るとやはり蜘蛛は居ない。日中はうす綿の巣に暮らし、夜な夜な出かけるらしい。ゴミの中にもぐるのか、ゴミ箱の外にまで出かけるのかはわからない。ある朝、ふたの巣を見ると彼女はいた。それだけではない。その1センチほどの鼻先に、うす綿の巣の下で小さなハエが羽根をふるわせている。夜に捕獲したのを巣にひきずりこんだのだろうか。彼女の朝食はハエの生食、翌朝見ると、あわれなハエのわずかな食べかすが巣にあった。夜の徘徊はどうやら食料調達が目的であるらしい。なんの因果かまっ黒で気味の悪いこの蜘蛛を、毎日ながめて何がおもしろい。会者定離、追い出す理由がない。

by mizzo301 | 2019-06-08 17:06 | エッセイ | Comments(6)