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駅長さんは猫

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 小春日和のいちにち紀ノ川をわたり、和歌山電鉄貴志駅のニタマ駅長に面会してきた。二代目猫の駅長さんである。先代タマ駅長を記念して新築された、猫耳のある駅舎にガラス張りのゆったりした駅長室、そこにニタマ駅長は制服制帽をぬぎすて、毛皮の私服姿でヒーターに寝そべってくつろいでおられた。中国語の観光客が数人、しきりに写真を撮っている。被写体になるのも大事な仕事である。ご機嫌をうかがうと、すべて先代タマ駅長のおかげですニャンとお答えになった。なにせ先代タマ駅長は社長代理、執行役員にまで栄達をきわめた実業家である。猫の駅長就任は人気をよび、日本はおろか多くの海外メディアの取材までうけている。人気に乗じて、会社はイチゴ電車、タマ電車、おもちゃ電車、ウメボシ電車などアイデア車両を投入して集客につとめる。その結果は、和歌山県に年間で11億円の経済効果をもたらしたという。昨年のタマ駅長の告別式は神道でおこなわれ、電鉄社長と和歌山県知事が弔辞を奏上、3千人が別れを惜しんだそうである。ちなみに先代タマ駅長も現ニタマ駅長も女史、猫界きってのキャリアウーマンなのである。
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by mizzo301 | 2016-12-23 17:48 | エッセイ | Comments(1)

ありふれたプードル

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 海からの風が冷たい朝であった。ドンの散歩で、登校する小学2,3年とおもわれる二人の女児に行き会った。ドンを見てひとりが、ウァー、かわいいっていってくれる。もうひとりは、なんや、みんなプードルばっかりやんと口元をゆがめていう。猫も杓子もプードルを飼っていると、人を小馬鹿にしたような口ぶりは、まるでくちさがない大人の女である。プードル三代4匹、何十年も飼っているOpaの自尊心は大いに傷つけられた。たしかにこの頃、町内でプードルを飼う人は多い。だがそのことで小馬鹿にされるいわれはない。小にくたらしい小娘である。プードルばっかりで悪うございましたねえ、といい返しそうになってやめた。幼い女児にむかってなんと大人げない。末期高齢者の干からびた理性が、あやういところでふと眼をさました。あぶないところであった。犬の散歩も油断はできない。
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by mizzo301 | 2016-12-09 23:10 | エッセイ | Comments(1)
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 NHKの「旅するドイツ語」で、もとウイーンフィルのコンサートマスター、キュッフルさんが、何人かの指揮者について自身の体験を語っていた。なかでも晩年のカラヤンとのエピソードは感動的であった。ある練習の日、キュッフルさんは激しい歯痛に耐えながら弾いていたそうだ。練習が終わった直後に、カラヤンの楽屋に呼ばれ、いったいどうしたのだと眼をのぞき込むようにして訊かれる。実は歯痛でと応えると、彼はよかったといって安堵の笑みをうかべ、大切な人を亡くすなどなにか不幸を背負っているのではないかと心配したよといわれたそうだ。その頃のカラヤンはなにかをつかまえていなければ立っていられないほどよわよわしく、指揮台からは奏者たちとのコンタクトをしきりに求めたという。眼を閉じたまま指揮をするなど壮年期の孤高のイメージではなく、楽員たちとほんとうに心の通い合う音楽を演奏したのは、晩年のカラヤンであったかもしれない。心覚えがOpaにもある。若き日の京響にロシアの大作曲家ハチャトリアンがきた。その頃第2バイオリンの指揮者の真ん前にOpaはいた。ある練習でふと指揮者を見上げると、まともにハチャトリアンと目があった。なんとその一瞬、彼はニッと笑ってくれたのである。そのとき背筋に走った強い電流に、Opaは今だにしびれている。
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by mizzo301 | 2016-12-06 18:41 | エッセイ | Comments(1)