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妄想老人

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 十月に入ったばかりのある朝、便が真っ黒なのに気づいた。おおかたほうれん草の食べ過ぎくらいに思って気にとめずにいた。その二三日後の夜中、小便に立とうとするが足下がふらついて歩けない。朝を待って近所の医院で診てもらうと、ひどい貧血だという。便が黒いのは胃の出血かもしれないということで、翌日さっそく胃カメラの検査を受けたが、胃にはなんの異常もない。そこで遠い病院での、大腸のカメラ検査を十日後に予約してもらった。Opaには大腸癌切除の前科がある。ネットをたぐると、さる大学医学部のページに、上行結腸癌では黒色便がでるという記事がある。ああ、おれはまたしても癌かもしれないという、不安のかたまりにおそわれる。こんどは助かるまい。もし死んだらドンを誰かが飼ってくれるだろうか。三年半そだてた裏庭の金魚二尾はどうなるだろう。そんなことより娘ふたりを呼び寄せて、Opa死後のあれこれを語っておくべきだろうか。年賀はがきの予約をしないでよかった。喪中のはがきを用意しておくにしても、本人が差出人ではつじつまがあわないなあなどと、不安にとりつかれて妄想のとどまるところがない。はたして検査の当日、八時半に入院して長い前処置があり、午後三時半をすぎてようやく軽い麻酔を点滴、お尻から差し込まれたカメラで大腸内の風景が目の前のモニターにくり広げられる。だがOpaの目では何がなんだか判断はつかず、ただ不安ばかりがつのる。はいお疲れさまでした、という医師の声で検査終了、所見をひとりで聞くのも不安だったが、さいわい様子を案じてかけつけてくれた弟がついていてくれた。ああ、運命の判定やいかに・・はい、Opaさんの大腸には何も異常はありませんでしたよ。医師の言葉を聞いたとたん、麻酔がまだぬけない身体の重みがが急に半分にへったような深い安堵につつまれたのだった。雨の中を弟に送ってもらう車から、心配をかけた妹にケイタイから電話をかけた。ああよかった、ほんとうによかったねとくりかえして、電話のむこうで泣いているのがわかった。
by mizzo301 | 2013-10-28 00:44 | エッセイ | Comments(3)

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 台風26号の通過で、テレビが伊豆大島の惨状を伝えている。からりと秋晴れ、風が冷たい。悪天候でたまった洗濯ものを干す。昼すぎ、ドンをつれて車でスーパーへ買い物に向かう。道すがら、露店に柿がならぶ。Opaの好きな種なし、ひとつ峠を越えた紀州の産である。ひと山五百円、買う。ようやく手に入れたOpaの秋である。
by mizzo301 | 2013-10-17 22:26 | エッセイ | Comments(0)