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クリスマスの風景

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 いつだったか、クリスマスイブの宵にローマ空港に降りたことがある。行きずりにちらりと目があった空港の女性職員が、クリスマスおめでとうという。あちこちでボナターレを言いあう声が聞こえて、気のせいか人々がみんなうきうきしているように見える。いち夜あけてクリスマスの朝は地下鉄も動かない。聖なる朝のカソリック総本山はどんなだろう、それを見たくてタクシーでバチカンへ行ってみた。簡単な手荷物検査のあと帽子をとって参内、Opaに宗教はないが、人の敬うものに敬意をはらうのは礼儀であろう。荘厳の気配を想像しながら、堂内へ一歩足を踏みいれておどろいた。そこはわいわいと無秩序な大群衆、カメラのフラッシュがあちこちで光り、帽子をとるものなどひとりもいない。よく見ると、はるか前方大祭壇に近く、粛然と着席する大会衆がいる。大勢の司祭たちもみえて、そこでは明らかにクリスマスのミサがおこなわれている。なにかの合図があるのか、会衆は一斉にたちあがり、聖歌の声も遠くから聞こえる。そこに法王さまがおられたかどうかはわからない。要するに前方ではミサが厳かにおこなわれ、後方では行儀の悪い見物人がさわいでいる。カソリック本山のクリスマスである。大聖堂いっぱいに荘厳のおもむきがたちこめているものとばかり、Opaは想像していた。自分の宗教でもないのに、いたくがっかりしたクリスマスの風景であった。
  ぽつねんと犬なでているクリスマス  央波
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by mizzo301 | 2012-12-24 21:54 | エッセイ | Comments(2)

リンゴが来た

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 長野の義兄からリンゴがとどいた。箱をひらくと、サンふじの大粒がきれいに並んで、一斉にこちらを見ている。さあ、わたしたちを早くお食べというてるみたい。兄にお礼の電話をすると「一等いいのを送ったから、ぼけねえうちに早く食っちまいな」という。ぼけねえうちにとはOpaのことかと聞き返すと、リンゴのほうが人より若干はやくぼけるそうだ。そういわれてもこのひと箱を、ひとりではとても食いきれねえだ。そこでドンを供に従え、ご近所数軒に少しずつおすそわけにまわる。ひとり暮らしの老人を、よろしくおたの申します、というわけだ。それでようやく半分にへらすことができた。それでもひとりには多いが、とにかく食うとしよう。蜜をたっぷりとふくんだ、甘い香りのリンゴである。午前午後のおやつに、朝のサラダにも入れようか。粒が大きいからそれでも一個で有り余る。というわけでOpaのリンゴ生活の始まりである。長野からのリンゴ便は、いまは亡き義母の時代からおよそ半世紀の歴史がある。宅急便などはなく、リンゴは傷がつかないように、もみがらと一緒に木箱につめられて貨車でやってきた。駅からの電話で受け取りにいくと、甘い香りのたちこめる保管庫から、駅員さんが取り出して手渡してくれる。Opaと信州リンゴの初めての出会いである。香りといい、たっぷりとふくんだ蜜の味といい、それまで食べていたリンゴとはまるで別物だと思った。それ以来、長野からのリンゴを毎年心待ちにするようになった。そうしていつの間にか、Opaはすっかりおじいさんになってしまいました。おしまい。
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by mizzo301 | 2012-12-19 16:31 | エッセイ | Comments(1)

新しいピンポーン

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 インターホンを新調した。通話に問題はなかったのだが、夏頃からピンポーンの音で映る屋内のモニター画面に見えるのは、ぼんやりと映る訪問者の顔を、せわしなく這いまわる巨大な蟻たちの姿である。どうやら内部に蟻が巣作りをしたようだ。寒くなって蟻の姿はなくなったが、画面は完全に白濁、外の様子はまったくうかがえない。これを機に、屋内用の子機が付属するのを取り付けた。ひとり暮らしに固定モニターだけでは不便である。たまたま二階にいて、階下のピンポーンで階段を転げ落ちないともかぎならい。子機さえあれば、風呂場やトイレにもそれを携行すればよい。これでどこにいようと、突然の来訪者にあわてなくてすむ。というわけで今朝、気楽に便座で新聞をひろげていた。そこへいきなりピンポーン、子機のモニターには寒風の中に立つ二人のご婦人、隣町の神の王国から参りましたとおっしゃる。神のみ使いを便座でお迎えしようとは・・。散歩で通る教会の方ではと見当はつくが、あいにくOpaは無信仰の徒である。彼女たちの無私の使命感は尊く思うが、入信への当たり障りのない甘言はOpaには失礼ながら空疎である。ケツはますます暖かい便座に吸い付いて離れない。その後、小冊子を郵便受けに入れたいとおっしゃるのを拒絶、寒空のもとすごすごと立ち去るお二人を,モニター画面に見てしまう。インターホンの子機が生んだ愚者がひとりここにいる。すべてをお見通しの神がもしおわすならば、二人のご婦人にご加護を・・
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by mizzo301 | 2012-12-11 23:09 | エッセイ | Comments(0)

傘がない

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 さる日、大学の同窓会があった。天気予報、曇りときどき小雨。折りたたみ傘と朝刊を持って出かける。あるホテルでのその会は、さんざめきのうちに滞りなく終了、同じフロアのカフェで気の合う仲間十人ほどが集い、なごりを惜しんでお茶を飲んだ。さてお開きとなって、Opa初めて気がついた。傘がない。記憶をたどる。傘を手ばなしたと考えられる可能性は二度、特急サザンのシートに帽子とともにおいた記憶がある。つぎは宴会場の荷物置き用テーブル、そこへは置いたかどうかは記憶があいまいである。帽子とマフラーはちゃんと手元にある。はたして傘だけを置き忘れるだろうか。それまでにすでに傘をなくしている可能性もある。念のため係の人にたのんで、宴会場を見せてもらうが忘れ物はなにもなかったという。帰途のなんば駅、遺失物係をたずねる。乗った車両の座席番号をいって調べてもらうが、傘の忘れ物はやはりなかった。実はOpa、今までめったに忘れ物をしなかった。その傘とて前のがこわれて仕方なく買ったのだが、軽くて使い勝手がよく長年愛用してきたものだ。Opaにもついに物忘れの兆候が・・イヤーンである。折りたたみ傘がないのは困る。さっそく駅からデパートに入る。傘売り場で物色していると、どんなのをお探しですかと、にこやかに女店員さん。うーん、なるだけ忘れないような傘をというと、一瞬たじろいだ彼女、すぐに笑顔にもどって、できるだけお気に入りのを一本お探しくださいという。それからは、そこにある傘を次々と開いたりたたんだり、根気よくOpaの傘選びを助けてくれた。ようやく二段折りの、えんじ色で軽くて大きく、丈夫そうな一本に決める。すると笑顔の女店員さん、せっかくお気に入りの傘を、くれぐれもおき忘れなどなさいませんようにといいながら、デパートの包装紙できれいに包んでくれたのだった。
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by mizzo301 | 2012-12-06 15:47 | エッセイ | Comments(0)