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<   2012年 11月 ( 3 )   > この月の画像一覧

干し柿いただく

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 ほんの少しと恐縮しながら、ご近所の奥さんがつるし柿を届けてくださった。こちらからは昨年も渋柿をいただいて、教わるとおりにつるし柿を作ったら、ずいぶん甘い干し柿になったのだった。お礼のついでに、甘くてうまかったと強調しておいたのをおぼえていてくださったようだ。欲深じじいの一年ごしの思わくが実ったか、今回は完成品の到来である。手間がなくていい。今年も言葉をおしまないようにしなくっちゃ・・。さっそくひとつぶをほおばる。しなびた見かけとはうらはらに、果肉はルビー色のジェリーである。期待どおりに甘くてうまい。残りを裏庭の軒端につるして記念撮影、来年もこの恩恵ありますようになまんだぶつ。Opa幼少のみぎりは太平洋戦争のまっただなか、食料不足日本である。こっそりなめていた砂糖壺が、いつの間にか塩壺にかわっていたりしてがっかりしたものである。菓子や果物など夢のまた夢、子供には甘味飢餓列島である。母に手をひかれて歩いていたそんなある日、セロハン袋に入ったくすんだ色の細長い物が、街中の店先に売られている。こんな物まで売るのね、といいながら母はそのひと袋を買ってくれた。それは柿をくるくるとむいた、その皮を干した物であった。そのかすかな甘さに夢中のOpaを、自分はひと口も口にせず、じっと見つめる母の眼を今も思い出す。
by mizzo301 | 2012-11-26 13:32 | エッセイ | Comments(0)

幸せの黄色い封筒

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 北京から一通の封書がとどいた。おもてに最終通告とある。もしや尖閣問題で、こんな年寄りにまで中国は言いがかりをつけてきたのかと一瞬思った。あわてて開いてみるとそうではなく、それは実に予想外のうれしいお便りである。Opaには何の応募も覚えはないのに、二億三千万円の賞金を受け取れというのである。最近は中国のことをちょっと良く思っていなかったけど、実は隣国の高齢者まで心配してくれる、気前のいいすてきな国なんだ。日本国でひとり暮らしの哀れな老人を見かねて、ポンと大金をくださるというのである。手続きにぬかりがあってはならない。まずは送られてきた書類を点検する。「賞金請求資格証書」「最終通告、賞金支払通知」「賞金支払請求書」ほかに、なぜか宛先がカナダの返信用封筒が同封されている。実に親切である。請求手数料は二千円、郵便為替同封またはクレジットカード番号を記入せよとある。たった二千円で二億三千万円をいただけるなんて夢のようである。十日以内に返信しないと資格が永久に消滅するとも記されている。これは大変、善は急げだ。早速すべてを破いてすてた。
by mizzo301 | 2012-11-10 17:11 | エッセイ | Comments(1)

檸檬

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 レモンの剪定をした。その季節かどうかは知らないが、うす緑に実り始めた数少ない実を見ながら毎朝数えたい。そのためにじゃまな徒長した枝を切るのである。案の定ことしも、小さな実をつけた枝を二本、過って切ってしまった。去年は3個、今年は2個、Opaの不注意で、これからという若い実の上をつみ取ってしまったのである。すまん。それはさておき、レモンといえば梶井基次郎の小説「檸檬」であろう。主人公がレモンの爆弾をしかけた丸善、われわれの知る河原町の店は、実は京都で二代目の店舗であったという。一階は普通の書店、二階は洋書や高級文具、バーバリのコートなども陳列していた。京響楽員の薄給で買えるものとてほとんどなかったが、その高級でおしゃれな空間にあこがれて、仕事帰りによくふらりとOpaが立ち寄ったのは、およそ半世紀の昔である。その店も残念ながら、2005年に閉じられている。あらかじめ閉店が報じられると、にわかに小説「檸檬」がよく売れ、店の書架にレモンを置き去る者がつづいたという。小説ゆかりの店でその本を買いたい、耽読のあかしに店の書架にレモンを置きたい。よくわかる。もし高校生の年頃であったなら、みずみずしいレモンをひとつポケットにしのばせて、Opaも京都へ向かったかもしれない。
by mizzo301 | 2012-11-05 22:28 | エッセイ | Comments(0)