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トイレットの夏

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 八月が終わる。つくつく法師がしきりに夏のおわりを告げてはいるが、酷暑はいまだにおとろえそうにない。この季節には、夏休みの宿題を前に絶望していた子供のころを必ず思い出す。夏休みも宿題もない喜楽老人の、六十年むかしの忘れられないストレスである。そこへ今日、嫁いだ娘二人がそろって帰郷、画学生の孫娘までが京都から訪ねてくれた。思わぬ残暑見舞いに老主夫Opaの無聊は大いになぐさめられた。さっそく今宵はハモすきの大盤振る舞いと決めた。だが彼女ら来訪のおかげでトイレ使用中はドアを閉めなければならなくなった。自分ひとりだと空間を仕切る必要を感じないから、夏にはトイレ使用中もドアを閉めたことがなかったのだ。便座着席、正面の短い二階廊下つきあたりは窓で、町内のいらかの向こうに山並みの緑が見える。時にはそこからの涼風が読書するOpaを撫でて通り過ぎ、トイレ背面の窓からなにがしかの香気をともなって隣家へと吹き抜けていく。そう、夏のトイレはOpaの書斎でもある。自分の書斎のドアを開け放ってなにが悪い。一昨夏の中国では、大都市のバスターミナルでも、トイレにドアが無かったぞ。などと思いながら、やはり娘たちと孫娘の滞在中は、トイレに入ったらドアを閉めることにした。まだまだ中国の奥深さには迫れそうにない。
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by mizzo301 | 2010-08-30 17:22 | エッセイ | Comments(0)

うん歩のエコロジー

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 わが友、フンバルト・ドン・ウンチッヒは朝の散歩で二度ウンチをする。家を出て間もなく先ず町内の往来でポンコロリ、次は海岸の遊歩道わき、オレンジに色づいたハマナスの実のそばへポンフニャリ、硬軟二様にたれ分ける。毎朝、それらの観察は健康チェックに欠かせない。その後はOpaの高い技術で回収が行われる。まず農協のティッシュペーパーを一枚かぶせ、ポリ袋につっこんだ手でそれをこねて丸めると、白い羽二重餅ができあがる。そのままつまんで袋をうらがえし、球形にかたく結ぶ。二度目はさらにその袋に手を入れて、一個目の作品を手のひらに持ちながら同じ作業をするのである。一枚のポリ袋に二個の羽二重餅をまるく収める、パティシエの腕が試される時である。このエコロジーくそ拾いには、雨の朝に新聞を入れてくるポリ袋の使い勝手が秀逸である。テレビやインターネットの普及で、新聞不要論をいう人もあるが、なかなかどうして、読売新聞は立派にくその役にたっている。
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by mizzo301 | 2010-08-08 11:39 | エッセイ | Comments(0)

バイオリン屋のTさん

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 バイオリン屋のTさんとはかれこれ四十数年来のつきあいである。その彼から、久しぶりの電話である。「ええ魂柱(こんちゅう)があるさかい、バイオリンを持っておいなはれ」と。Tさんの店は大阪は西成にある。土地柄を知る人にはバイオリン専門店としてちょっと意外なロケーション、だが関西のメジャーオケ、大阪フィルハーモニーの拠点も同じ西成である。下町に音楽シーンの縁があるのも大阪らしいてええやんか。ちょっと歩けば新世界、なんて思いながらOpaバイオリンを持って店を訪れた。何度かTさんに調整を試してもらったが、納得の音にならなかった楽器である。あとは良い魂柱の入手を待とうということになっていたのだった。ところで魂柱とは、バイオリンの内側にある小さな円柱である。これが実は楽器の音色、音量を大きく左右するくせ者である。Tさんさっそく古びた棒きれ、実はそれが魂柱を数本見せて、好きに選べという。どこそこのうなぎはほんまにうまいなあ、などといいながらTさんそのうちの一本をキコキコと切る。その両端をぺろりとなめて、どこそこの串カツ食いたいなあといいながら、F字穴からそれを押し込む。夏はやっぱりそうめんやなあといいながら、駒を立て弦を張って完成。はたしてうなぎ、串カツ、そうめんの思いがこもったバイオリンの音は、それが実にすばらしかったのである。弓をあてるや、乾いた大きな音が耳と左腕にビビビと伝わる。今さらながら、バイオリンの外からは見えないパーツ魂柱の力と、職人Tさんの食欲と上等の腕前を再認識させられた。大阪の楽器職人の技術は、食い意地によって支えられているみたいな、クソ暑い昼下がりであった。
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by mizzo301 | 2010-08-01 15:53 | エッセイ | Comments(1)