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<   2006年 11月 ( 7 )   > この月の画像一覧

COSMETIC EXPRESS

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電車の横長シート、真ん前に若い女性、やや細面、爽やかな面立ちである。
長いダークブラウンの髪がカールしながら背中にまで流れている。
Opaじろじろと見たりはしない。本に目を落としながらのさりげない観察だ。
オーケストラのバイオリン奏者が、譜面を追いながら視野に指揮者の動きをとらえている、あの要領だ。
美女、バッグから化粧ポーチと鏡を取り出す。
電車で化粧は今や若い娘の常識か。
鏡を持つ左手の指に筆ペンみたいなのを器用に四本も挟む。
通勤時間帯ではない、これからデートでもあろうか。
右手で手早く筆ペンを取っ替え引っ替え、顔面パーツを装飾していく。
わけても目の周辺は大事であるらしい、一本の筆ペンで隈取りが入る。
さらに瞼に青いマジック、綿棒現る、縁取り修正。
バリカンの孫みたいなので両眼カシャカシャ、睫毛ぱっちり。
さらにバリカン、さらに綿棒、唇ぱくぱく、電車はカタコト・・。
爽やかな美女、今見事浮世絵写楽風に変貌、がっかり・・。
さらに鏡の出番、次の課題は髪の毛だ。
綺麗な髪の幾分かを背中から前にかき寄せ、顔三分ほどを覆ってみたり開いてみたり、赤いジャケットの胸元でカールの位置をしきりに修正。
それらの動作は終着駅まで倦かずに繰り返された。
Opaの薄い頭の真ん前で、いかにもこれ見よがしだと思った。
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by mizzo301 | 2006-11-30 18:40 | エッセイ | Comments(0)

思いでのひばり

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 晩秋の土曜の午後、池田市で小さなコンサートが開かれた。地元高校同窓有志のミニコンサートである。バイオリン奏者二原ヒロシに誘われOpaもそれに参加した。彼は高校入学以来の友であり、京響の奏者を定年まで勤めたプロである。片やOpa、今更人様の御前でバイオリンを弾くなんて、今のお気持ちはええいっ墓場の肝試し。曲目は二原ヒロシが用意してくれたショスタコービッチのデュオ小品5曲、伴奏は先輩梅杉先生である。その日は高校の恩師八鳥先生が、ご老体ながらかくしゃくとして会場にみえられた。Opaますます緊張、昔受験で随分お世話になったんだもの。
 さて我々の演奏、初めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いても気にするな、あっという間の肝試し。後は悲しくも暖かいお世辞の真綿にくるまれて、冷や汗三斗の濡れ手拭いで家路についたのであった。
 かつて1956年、Opa高校2年の秋、文化祭で弦楽四重奏団を結成した。第1バイオリン二原ヒロシ、第2バイオリン高一のS嬢、ビオラ昔のOpa、チェロ八鳥先生。
 曲目、ハイドン作曲、弦楽四重奏曲「ひばり」、演奏開始直前の静けさ、二原ヒロシがズボンのポケットから取り出したハンカチと同時にコインが音を立てて舞台に転がった。「それは五円玉か十円玉かっ」と大声のヤジ、「十円玉じゃいッ」二原ヒロシステージからすかざず応酬、見事演奏は出鼻をくじかれた。余談、学食の素うどん十三円。
 気を取り直しハイドン作曲「ひばり」演奏開始、奏でられる音楽はスズメになりアヒルになり、ついにはニワトリに進化してステージを飛び跳ね、暴れ回った挙げ句ようやく曲は急停車。拍手喝采!だがその音楽に「ひばり」の囀りを聞いた者は一人もいなかったに違いない。
 

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by mizzo301 | 2006-11-26 16:54 | エッセイ | Comments(0)

我が友バイオリン屋

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友にバイオリン屋がいる。
店頭にバイオリンを多数並べて商うが、滅多に売れる気配はない。
呑気なバイオリン屋唯一の悩みである。案じたOpaは店頭のバイオリン全てに
ボンドで羽を取り付けるなど提案した。飛ぶように売れるというではないか。
だがバイオリン屋は拒絶、頑固な男だ。
かつて彼は、関西にこの男ありといわれたバイオリンの目利きである。
近頃その目があやしい。彼の奥さんが研究する韓流ドラマを覗き見るうち、彼自身急性韓流ウイルスに被患してしまった。日に5時間見ないと震えがくるという、劇症である。憶測するに、それらドラマが発するカプサイシン等のウイルスがバイオリン屋の目玉にこびりつき、バイオリンの木目を正しく読めなくしているのだ。
その上彼は神出鬼没である。行方を告げずにふと家を出たかと思えば、いつの間にか奥のトイレから現れたりする。妖怪じゃあるまいし、商店主が出たり消えたりでは困るのである。
バイオリン屋はお洒落である。筋向こう4件目のマッサージにもボルサリーノを頭に乗せて出かける。商売上身だしなみは特に大切である。その点彼は賞賛に値する。
以上彼の生活行動様式に鑑み、バイオリン屋売り上げ倍増計画試案をOpaは練ってみた。その骨子は次の三点に要約される。
一、韓流ドラマ鑑賞は日に15分以内とする。
    (注)全面禁止は精神の不安定招来を考慮して行わない。
一、奥さんに無断無用の町内徘徊を慎む。
一、週一度、鼻毛の美容整形に努める。
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by mizzo301 | 2006-11-20 00:49 | エッセイ | Comments(0)

Opa,Opaを釣る

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ルアーのフックが右手親指にブスリと刺さった。
釣行後に洗ったルアーを、乾燥のため高所に吊そうとした時のことだ。
吊したルアーから手を離す刹那足を滑らせた。右手親指に激震。
ルアーはおろか自分まで吊るしてしまって身動きがとれない。
これじゃ納屋でOpaの一夜干しが出来上がる、炙って食う人無かろうなあ・・
這々の体で身体は自由になったが、返しがしっかり食い込んで指のルアーははずれない。
12,5cmの小魚、こじゃれたピアスといえなくもないが、ちと大きすぎる。
外科医の待合室、首に包帯の幼女が怪訝な眼差しで近寄ってくる。
ルアーをちゃらちゃら振って見せる大サービス、いててててっ!
やがて診察室、医師の問診開口一番「殺生戒の報いですなガハハッ、釣れたのは何時ごろですか?」まぎらわしい質問だ。
次は仰向けに寝かされ、視野からルアーが遮断される。
はい麻酔です、グサッ、いででいででいででーお!
たちどころに患部麻痺、ぐいっとフックを引っこ抜くショックがあって大手術終了、痛みはない。
四、五日患部を濡らさぬようにとご注意、はずれたルアーを受け取りながら承る
教訓一、ルアーは決して高所に吊さないこと。
教訓二、指にルアー装着時?幼児に余計なサービスせぬこと、自分が痛い        目にあう。
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by mizzo301 | 2006-11-16 19:17 | エッセイ | Comments(0)

若き女性、電車で塗る

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早朝の通勤特急、今朝の隣席は若い女性である。
乗り込むやいなや、あたふたとバッグから化粧ポーチを取り出して開く。
次から次へと現れる塗料と顔面塗装用工具類。
せわしなく両手が動いて塗装工事進行、
まともに見ることも出来ず落ち着かないことこの上なし。
安眠妨害のまま終着駅間近、資材工具の一切はまた元のバッグに収まり
作業めでたく竣工の様子、女性下車、颯爽と立ち去る。
せめて落成の仕上がりを見学したかったがままならず
眠い目をこすりながら、Opaはトイレへ向かった。
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by mizzo301 | 2006-11-11 18:31 | エッセイ | Comments(0)

立冬は律儀に・・

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立冬の朝、木枯らしが泉南を吹き荒れた。
自然の変容がかくも暦に律儀とは知らなんだ。
庭のハイビスカスやラベンダーの大鉢が仰向けにのけぞって悶え、
植木の小枝たちが吹き飛ばされんばかりに喘ぎながら、風神に抗っている。
気温10.4度、Opa慌てて腰にホカロンを一つ貼り付ける。
この朝パートのOpaご出勤、電車に乗る。
車窓外は怒濤に荒れ狂う海、暗雲垂れこめる対岸淡路島、
泡立つ大波が次々と押し寄せざわめき立つ海岸。
釣り人Opaは思う、こんな日の海中はどうなっているのだろう。
海底にも押し寄せる大波に身を任せ転げ回る鯛や平目たち・・
流されまいと岩に張り付く蛸や烏賊、襲いかかる海坊主・・
どこからともなくアリエルの歌声が・・
まさかそんなこともあるまいなあ・・
腰のホカロン心地よく、その朝もOpaは車内で気を失った。
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by mizzo301 | 2006-11-08 23:29 | エッセイ | Comments(0)

電車の紳士淑女

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行楽シーズンである。
ある早朝の通勤特急、30人ばかりのおばさんが乗り込んで来た。
町内会婦人部、一泊旅行の風情である。
楽しげかつ声高に旅先のことなど語って車内騒然。
中には立って前後に離れた座席の仲間と大声で語り合う。
通勤客たちは皆眠い、座席指定は睡眠契約でもあるのだ。
たまりかねた前方の紳士が一人立ち上がり、振り向いて一喝。
「静かにしなさいッ、あなた方だけの電車じゃないんだッ」
シューン、蚊の泣くようなスンマセンの声ひとつあって、
淑女たちは寡黙になった。だがその食欲は黙っていない。。
紙袋を裂く、キャンディの包みをはがす、おかきをかみ砕く
せんべいを割る、ガムをかみ続ける、それらの音と臭いが、
終着駅まで車内に充満し続けた。過激な復讐である。
多くの通勤客同様、その朝ついにOpaは眠れなかった。
数日後の同じ車両、今度は男女3人の先生に引率された小学生。
30名ほどの男女児童、身体に不釣り合いなでかいバッグ。
ちょっと大人びた振る舞いは高学年、修学旅行である。
今朝も眠れそうにないなあ、悪い予感がする。
ところが彼ら、整然と乗車するやたちまち自分のシートを見つけ、
着席後もほとんど話し声がない、実に静かなのである。
彼らに憧れの指定特急を体験乗車させる、という学校の配慮であろうか。
小さな紳士淑女を乗せた特急電車は、秋の海岸線を爽やかに駆け抜ける。
Opaは感動して、その朝も眠れなかった。
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by mizzo301 | 2006-11-04 12:14 | エッセイ | Comments(0)