西安の夜
2007年 08月 31日
中国の旅団長、香芝氏は八老中一番の中国通である。この旅も彼の立案、早くから周到な計画を立てて下さった。安心の旅である。団長以外の7人は金魚のウンコである。ウンコが中国を歩いているのである。ある夜、餃子づくしの店に案内していただいた。二胡と箏、それに横笛だったかの演奏を聞きながら、次々と運ばれる様々な餃子を食うのである。奏者は八老のリクエストにも応えて日本の曲をも演奏するが、楽器のせいかどの曲も中国の味がする。口と耳の両方から中国攻めである。次々と運ばれる餃子はどれもすこぶるうまい。こううまくちゃ、中身が段ボールだろうとティッシュペーパーだろうとかまやしない。広く華やいだ店内は中国人の客で超満員、あちらこちらで白酒のカンペーが聞こえる。実に賑やかである。現代中国庶民の豊かな生活の一端をかいま見た、餃子づくしの夜であった。
餃子に満腹した八老一同、団長香芝氏の提案で夜の町を散策、ホテルまで歩くことにした。ライトアップされた大鐘楼を臨む広場には、バンド演奏を囲んで夏の夜を楽しむ群衆がある。ネオンに輝く周囲のビル群、虹色にライトアップされた噴水が美しい。喧噪の中国、夜の町を団長香芝氏にくっついて金魚のウンコが行く。迷子になったら大変だ。物売り、大道芸などが道行く者を飽きさせない。だがそんな中に一人の異形を見た。身長一メートルばかりの小さな大人の女、裸足にみすぼらしいワンピース、歌ともうめきともつかぬ声を発しながら、両手を横に上げ下げしては身体を左右に揺する。歌い踊っているつもりであろうか、その汚れた小さな顔は笑っているようでもあり、悲しんでいるようにも見える。前には銭受けの空き缶、だが立ち止まる者はいない。八老のみんなもこの光景を見たはずだが、誰もそれを話題にしようとしない。語るに語れぬ思いを、みんな胸に抱えてしまったのだろうか。異形、自らのそれを売り物にする路上の人を、中国で見たOpaのショックは小さくなかった。
by mizzo301
| 2007-08-31 11:15
| エッセイ
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