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Opaの日々雑感


by mizzo301
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指揮者か詐欺師か

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 「指揮者ほど詐欺師のつきやすい職業はない」 かつて「バイオリン演奏の技法」の著者、カール・フレッシュは書いたそうだ。いわれてみればOpaも若き日、相手が指揮者か詐欺師か分からぬままに、交響楽団でバイオリンを弾いていた時がある。彼らの身振り手振りや表情が偽物か本物か、善良な音楽愛好家に見分けは難しい。有名=本物、日本の方程式に従って、大枚を払い超有名な指揮者を眺めていれば間違なしといったところだろう。
 これら世界の大物指揮者を手玉に取っていた謎の興行師、ロナルド・ウィルフォードが、「すべての指揮者の指揮者」としてレブレヒト著「巨匠神話」に紹介されている。ニューヨークやウィーンを初め、世界の有名オーケストラに指揮者を手配し、契約料の20%をせしめ大金を稼いだという。結果、指揮者の契約料は高騰し、楽団員は低賃金に喘ぐのが世界のオーケストラの現実となっていく。小澤征爾もカラヤンとバーンスタインの二人から彼に紹介されている。ウィルフォードの権力は強大で、大指揮者アンドレ・プレビンですら「私や小沢などは、彼の意見を聞かずに他所には移りません」と語っている。
 音楽で大富豪となったカラヤンも彼と結託、互いに巨富を紡いでいる。その上カラヤンは、ベルリンフィルの楽員にリハーサルの手当をはずみ、録音録画した全てをレコード、CD、映像にして世界中で荒稼ぎをしている。さらにベルリン、ウィーン、ザルツブルグといったお膝元での他の指揮者の活動を、手の込んだやり方で制限までしたようだ。正に利権の帝王である。特に夏のザルツブルグには、陰謀とスキャンダルが渦巻いていたという。
 かつてカラヤンはナチ党に二度も入党、時の政権にすり寄っている。だが変わり身は早く、戦後の楽壇で早くも成功、フェラーリを乗り回しジェット機を操縦、銀行家や世界の富豪を友とした。本の終わりでは、入党もせず純粋に音楽を愛し、哲学者や文人を友とした往年の大指揮者フルトヴェングラーとさりげなく比較されている。
by mizzo301 | 2007-06-06 14:14 | エッセイ | Comments(0)