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Opaの日々雑感


by mizzo301
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赤鬼、青鬼、鬼瓦、節分の宿題

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 敗戦の翌年1946年春、Opa小学校入学である。戦争で幼稚園には行けなかった。初めての団体生活である。担任のM先生はひどい中年女性だった。子供の何かが少しでも気に入らぬと、頭をこづき回し床に突き倒した。何人もの級友がそんな目に遭い、泣きわめくのを見ているだけで怖かった。だがついに自分にも受難の日が来た。休みがちなOpaは先生のある質問が理解出来なかった。つかつかと歩み寄った先生は、悪態をつきながらいきなりOpaの筆箱をとってそれで頭をこづき回し、それをぶちまけたあげく、身体を床に突き倒した。恐怖に震えて大泣きをしたのはいうまでもない。でもその屈辱を家では話さない。他の子供達もきっとそうだったろう。Opaの就学は恐怖で始まったのである。新入児童にそんな接し方をする先生を想像できますか。そんな中に一人例外の男児U君がいた。時折風呂敷包みを先生に手渡す。そこからは野菜の端っこなどがのぞいている。翌日先生は愛想笑いを浮かべ、U君に風呂敷を帰しながら、お母さんによろしくね、などという。U君が先生に怒られるのだけは誰も見たことがなかった。いじけた教室で彼だけが悠然と見えて妬ましかった。
 両親はM先生の暴力を知るよしもない。参観日などは先生の前でバッタのようにぺこぺことお辞儀をしている。家では彼女の風貌を鬼瓦なんていってるくせにだ。そうこうする内に年も明け、節分の宿題が出た。赤鬼青鬼の面をそれぞれ一枚づつ提出せよという。Opaは絵が苦手、それに鬼がどんなものかも知らない。画用紙を前に手をこまねくばかり。ついに明日が期限という日、見かねた母がOpaを叱りつけながら画用紙に赤鬼を描き始めた。それを見た父が、貸してみろともう一枚の画用紙を取り上げ、青鬼を描き出した。幸か不幸か両親は共に絵が得意だった。二人はOpaのクレパスを奪い合って夢中で描いた。間もなく赤青二匹の鬼が見事に仕上がった。どう見ても子供の作品ではない。気は進まないが提出するしかない。自分で描いたのかと鬼瓦はOpaに尋ねた。両親がともいえないので、身をすくめながら肯いた。意外にも鬼瓦は無言で、その二枚を他の子供達の作品と共に教室の壁に飾ってくれた。それは子供達の稚拙な絵の中にあって、あまりにも巧く描かれた二匹の鬼が、教室の高みでにらみをきかせる格好になった。Opaはいたたまれなくて、早く壁から下ろしてほしいと願うばかりであった。節分の度に思い出すほろ苦い味、60年の昔である。
Commented by Sugar@Baltimore at 2007-02-09 06:21 x
「Happy 節分!」
(←節分の説明をアメリカ人にしたら、こう言われました。)

何故親というものは、子供の宿題に手を出したがるのでしょうね。
ワタクシめも告悔させてくださいませ・・・。

あれは中学1年の8月31日。
山と積まれた白紙の宿題に追われているワタクシを見て
ママンは嬉々として美術の宿題を手伝ってくれました。
採光を取り入れたつもりが超極悪青髭顔な弟(小6)の肖像画。
ワタクシが描いたほうがよっぽどマシだという悲惨な出来でしたが、
そのまま提出してしまい、「どこのおじさんの顔?」と聞かれました。
絵の上手なご両親が羨ましいです。

さらに高校生になり、家庭科の宿題をママンは徹夜でしてくれました。
・・・三角巾に施された紛うことなき絢爛豪華な戸塚刺繍。
なぜばれなかったか未だに謎でございます。

こうやって甘やかされたおかげでワタクシは未だに縫い物編み物が出来ません。
by mizzo301 | 2007-02-05 17:58 | エッセイ | Comments(1)