毎朝6時すぎにふと眼がさめる。もうひと眠りしたい気分で眼をとじる。すると必ずドンが胸の上に乗っかって顔をなめまわす。決して二度寝をさせてくれない。散歩の催促である。Opaの一番つらい時間である。顔を洗い、腰痛対策の簡単なストレッチをして散歩に出る。軽い冷気をはらんだ秋風が心地よい。ようやく眼がさめる。晴れわたった空に雲が浮かんでいる。そのひとつがどう見てもなにかの動物に見える。アヒルのようでもあり、うずくまったドンが空中に浮かんでいるようでもある。「ノンちゃん雲にのる」をふと思い出す。70年のむかし、Opaは虚弱で学校をよく休む学童であった。教室に古びた本箱があって、中にある数冊の本の一巻がそれであった。病弱で運動を禁じられていたOpaには、うれしい本箱であった。体育の時間などは夢中で本を読んだ。月に一冊新しい本が増えるのが待ち遠しかった。Opaの読書好きはそれ以来のことである。その文庫、他のクラスにはなかった。我らが学級文庫、実は担任の先生のポケットマネーでまかなわれていたのだった。