干し柿いただく
2012年 11月 26日
ほんの少しと恐縮しながら、ご近所の奥さんがつるし柿を届けてくださった。こちらからは昨年も渋柿をいただいて、教わるとおりにつるし柿を作ったら、ずいぶん甘い干し柿になったのだった。お礼のついでに、甘くてうまかったと強調しておいたのをおぼえていてくださったようだ。欲深じじいの一年ごしの思わくが実ったか、今回は完成品の到来である。手間がなくていい。今年も言葉をおしまないようにしなくっちゃ・・。さっそくひとつぶをほおばる。しなびた見かけとはうらはらに、果肉はルビー色のジェリーである。期待どおりに甘くてうまい。残りを裏庭の軒端につるして記念撮影、来年もこの恩恵ありますようになまんだぶつ。Opa幼少のみぎりは太平洋戦争のまっただなか、食料不足日本である。こっそりなめていた砂糖壺が、いつの間にか塩壺にかわっていたりしてがっかりしたものである。菓子や果物など夢のまた夢、子供には甘味飢餓列島である。母に手をひかれて歩いていたそんなある日、セロハン袋に入ったくすんだ色の細長い物が、街中の店先に売られている。こんな物まで売るのね、といいながら母はそのひと袋を買ってくれた。それは柿をくるくるとむいた、その皮を干した物であった。そのかすかな甘さに夢中のOpaを、自分はひと口も口にせず、じっと見つめる母の眼を今も思い出す。
by mizzo301
| 2012-11-26 13:32
| エッセイ
|
Comments(0)