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Opaの日々雑感


by mizzo301
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さらばガソリンスタンド

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 むかし、草ぼーぼーの教習所でOpaは運転免許を取得した。路上講習などはない。日本初の高速道、名神の一部がようやく開通したばかりである。そのころの日本の道路は、主だった道路以外すべて地道であった。以来、運転技術を一定の低水準に保ちつつ今年で60年、Opaはいつの間にか高齢運転者になってしまった。そのせいか高齢者の交通事故が伝えられるたびに、人ごととは思えず身がすくむ。とはいえOpaはとても不便なところに住んでいて、まだ免許証返納を出来ない事情がある。日頃はOmaの遺した軽自動車を愛用していた。ところがそれがあまりにも古く、次の車検はやめた方がいいと車屋さんに宣告されてしまった。遠方に住むむすめ達は、それなら新しいのを買えばという。いっそデンキ自動車にすればともいう。ふつうは事故を心配して老人の運転に反対するはずの家族に背をおされ、Opaはほいほいとエレキテルの軽自動車を買ってしまった。かるいじじいである。ならば必ず事故をおこすまい。もしおこしても絶対に人を道連れにはすまい。その時にはひとりであの世に乗りつけよう。だが充電設備はあるのかなあ、あの世のインフラが気になる。まあそうなったときには、ラインであちらに住むはずのOmaをよびだして、冥土喫茶でのんびりとすごしたい。

# by mizzo301 | 2023-06-19 18:43 | エッセイ | Comments(2)

チョー憂うつなできごと

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 買ってきた卵を冷蔵庫にうつしていて、うっかり手をすべらせた。生卵がひとつOpaの足もとではじけた。しまったあ、見るとすでにスリッパは卵の沼のなか、黄色い大きな目玉がひとつ、さてどうするといわんばかりにOpaを見上げている。これはいったいどう始末したらええねん。一瞬絶望感。そこへドンがやってきて卵の沼をかきまわし、その足で家中を歩きまわる。やめてくれーッ、Opaの絶望感倍増。でもこれを片づけないわけにはいかない。無数の卵をわってきた長い人生でも、床に卵を割ったのは初体験である。どう始末したらいいのやらかいもく見当もつかない。立ちつくしていて腰が痛い。その場にしゃがみ込むと立ちあがるのがつらい。だがなにもしなければ割れた卵は永遠にそこにある。しかたなくべたべたのスリッパでよたよたと歩きまわり、ティッシュ、ぬれぞうきん、バケツ、ちりとり、フライ返しなどでたらめにアイテムをあつめる。最適な方策は思いつかないまま、とにかくもたもたと掃除にかかる。外はどしゃ降りの雨、実にゆううつな半日であった。生卵には気をつけろ。

# by mizzo301 | 2023-06-06 18:35 | エッセイ | Comments(0)

ドンが元気になりました

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 窓辺にモッコウバラ、よく晴れた日曜日にOmaの13回忌法要をいとなんだ。Omaは幼いドンをこよなく愛したOpaの連れあいである。法要には病の癒えたドンも、Opaのそばにぬかずいて参加した。およそ一時間の読経のあいだも身じろぎもせずにいたけど、僧の声明が子守歌になっていたのかもね。後の会食では、ドンちゃん元気になって良かったねとみんなに祝福されながらフィッシュソーセージを一本たいらげた。動物病院でもうろうとして横たわるドンを、なんとか生きてと願いながらなでさするばかりの日々だった。ほとけ様に手をあわせてお慈悲を請う毎日だった。よくぞここまで快復してくれた。その夜、ドンが病院でみた夢を、Opaに目で語ってくれた。彼岸のほとりを当てもなく歩いているとなつかしいOmaが表れて、はやくOpaのところへお帰りといいながら、やさしく頭をなでてくれた。そこで急いで帰ってきたという。

# by mizzo301 | 2023-04-26 19:03 | エッセイ | Comments(0)

ドン リハビリに励む

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 日帰り入院を続けたドンの胆嚢炎はさらに進行し、のこる手段は胆嚢切除の手術だけということになってしまった。犬の15歳はおよそ人の80代といわれる。はたしてドンは手術に耐えて、Opaのもとにもどれるのか。獣医師は若い女性である。犬にも人の子を診るようにやさしい。診察も説明もとてもていねいでよくわかる。気の小さいOpaは手術をすべきかと大いに悩み、ついに、先生お願いしますと頭を下げてドンの生死をこのやさしい獣医師にゆだねたのだった。翌日、手術のおわりを待ってあたふたと駆けつける。麻酔からさめたばかりのドンは、点滴や腹部のドレーンにつながれてうつろな眼で腹ばいになっている。ドンは試練に耐えて生きて還ってきたのだ。思わず頭や痩せた背をなでまわす。Opaはこみ上げる嗚咽をこらえながら、先生に心からお礼をのべたのだった。その六日後の朝、ドンはOpaの腕にだかれて退院した。術後の抜糸はまだすんでいない。はじめは自力歩行も困難だったが、リハビリのかいあってか、退院から数日を経たいまはよたよたと自力でオシッコにゆけるほどに回復している。もちろんいつも腰痛持ちの看護師がそばについている。まさか年老いてわん公と老老介護の生活をせんならんとは思いもよらなかった。

# by mizzo301 | 2023-03-26 23:20 | エッセイ | Comments(1)

ドンやまいに臥せる

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 やまいはこんなに急にくるものか。水曜の朝、なんの異常もなく散歩をすませたドンである。昼ごろには急に後ろ足がもつれだし、ほどなく歩くのはもとより、自力で立ち上がることさえできなくなった。目の前の光景が信じられず、Opaはうろたえた。動物病院で血液検査、エコー、エックス線検査の結果、胆嚢炎と診断される。黄疸もあってかなりの重症だという。五日間点滴に通ったが改善はみられない。獣医師に入院をすすめられたが、それをOpaはどうしても受け入れられない。以前に入院させた子をそのまま亡くした経験がある。いぬを病院にあずけて帰るときの、Opa夫婦を見つめるその子の悲しい眼をいまも忘れられぬからである。その時は悲しみをふたりで分けあえたが、いまやOpaひとりではとても平常心をたもてそうにない。それならと獣医師は、毎朝あずけに来て夕方迎えに来るのはどうかという。その間に時間をかけて静脈注射や点滴治療などをおこなうという提案をOpaは受け入れることにした。回復の保証はないというが、それは運命にまかせるしかない。食欲をなくしたドンは、この五日間なにも食べていない。大好きなフィッシュソーセージを、Opaの手からよろこんで食べるドンをもう一度見る日はあるのだろうか。

# by mizzo301 | 2023-03-13 17:11 | エッセイ | Comments(1)