むかし、草ぼーぼーの教習所でOpaは運転免許を取得した。路上講習などはない。日本初の高速道、名神の一部がようやく開通したばかりである。そのころの日本の道路は、主だった道路以外すべて地道であった。以来、運転技術を一定の低水準に保ちつつ今年で60年、Opaはいつの間にか高齢運転者になってしまった。そのせいか高齢者の交通事故が伝えられるたびに、人ごととは思えず身がすくむ。とはいえOpaはとても不便なところに住んでいて、まだ免許証返納を出来ない事情がある。日頃はOmaの遺した軽自動車を愛用していた。ところがそれがあまりにも古く、次の車検はやめた方がいいと車屋さんに宣告されてしまった。遠方に住むむすめ達は、それなら新しいのを買えばという。いっそデンキ自動車にすればともいう。ふつうは事故を心配して老人の運転に反対するはずの家族に背をおされ、Opaはほいほいとエレキテルの軽自動車を買ってしまった。かるいじじいである。ならば必ず事故をおこすまい。もしおこしても絶対に人を道連れにはすまい。その時にはひとりであの世に乗りつけよう。だが充電設備はあるのかなあ、あの世のインフラが気になる。まあそうなったときには、ラインであちらに住むはずのOmaをよびだして、冥土喫茶でのんびりとすごしたい。
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by mizzo301
| 2023-06-19 18:43
| エッセイ
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